こんな事をしようとしているのかと思う。
最近の地震カタログの精度向上を考えると、一連の地震活動において時間・空間・マグニチュードやモーメントテンソルなど基本要素間相互関係の統計的性質の探求、地震活動の非定常性や地域的多様性の研究など、それらの基礎研究は大いにその余地がある。とくに時空間データを直接的に解析し、地震活動の地域差などを考慮の上に、これらを物差しに地震活動の微妙な静穏化や活発化の地域や時間の検出などの異常活動の検出能力を拡大する標準的地震活動計測モデルの進展が望まれる。
巨大地震に関わる静穏化は長期にわたるデータの均質性を保持するために、広領域にわたって5.3前後以上の中地震データを使って調べた[Ogata, 1992]。 しかし、下限マグニチュードが下がるにしたがって解析は難しくなる、データが増えると地震活動のパタンの多様性が強まり、地域内の地震活動を単一の時空間ETASモデル[Ogata, 1998] によって適切に表現できない場合が多くなるからである。かくして地震活動の地域的多様性をどの様に取り扱うかという課題がある。この様な困難からの出口として現在検討を進めているのが、 ETASを基本にした、 大量のパラメータを使うベイズ型統計モデルである.
制限付きトリガーモデル [Ogata, 2001] は各地震についての余震活動の特徴を同じものとしないモデルを考え、最尤法で推定した。これに基づいて、マグニチュードが与えられていない、発震時刻のみのデータから対応する余震数(クラスタ・サイズ)を推定し、これからマグニチュードを推定する方式を提案できる。1926年以来の日本全体での大地震の余震数を推定クラスタサイズで求めマグニチュードに対するプロットをすると陸域の地震と海域の地震では余震生成密度に明瞭な違いが見えた。1995年兵庫県南部地震の余震の空間分布とそれらの余震のクラスタサイズ分布は必ずしも余震のマグニチュードと対応しない。またクラスタサイズの大きな余震の震源は余震域の境界部分に多く分布することが見えた。これを広域なデータについて時空間モデルで表現するにはそのパラメータが場所の関数になるようにしデータの数倍もの更なるパラメータを使ってベイズ的モデリングをする必要がある。
地震の顔。 他方、順調な地震活動であっても、最尤法で求められるモデルは平均的な地震活動の近似でしかない。実際、例えばマグニチュード頻度分布のb値のように、データの下限のマグニチュードが小さくなるに従って隣接地域でも地震活動の違いが浮き彫りになってくる(地域内の不均質性)。これはモデルのパラメータが場所によって有意に異なっていることで認識される。この問題は位置依存パラメータのベイズ型大規模モデルによって攻略でき、ETASモデルも同様の拡張の筋道を辿ることになろう。この様にして求められた地震活動の地域的不均質性や時間的非定常性の変化と地質や応力分布、その変化などの地殻内の物理的諸過程との対応の探索を進めることになろう。
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